カノンリベンジ -4-
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それは10年前ではなく、10日前のことであった。
某吸血鬼の家・・・
一人の少女が気絶していた。原因は強打による失神。
某日、通りがかりの男に急に襲われ気を失ってしまったのだ。
彼女が気がついたときあたりは真っ暗でそこが部屋であることすら認識できなかった。
そのため思わず大声をあげてしまった。
「わーーーっ!!ここ、どこ!?なにもみえないよーーーっ!」
とにかく明かりを求めてあちこち暴れまわってみるも一向に光がつく気配がない。
錯乱しあちこち殴りまわっているとその感触が硬かったものから人肌のような柔らかいものへと
変わる。そしていつのまにかドアがあいており廊下の明かりがその顔を映し出す。
「このなゆ様の顔に傷をつけるとは・・・」
自らのことをなゆ様と呼ぶ少女に彼女は恐怖しか見出せなかった。
奥歯がガチガチとなり、じりじりとあとずさるも部屋の隅に追い込まれる。
「女狐がッ!我が血肉となれいッ!」
下の階でゼロワンは食べ物をあさっていた。さきほどなゆなゆを殺しそこねたのは
きっと空腹からだ、と思ったからである。なにやら上がうるさい。まぁいつものことだ。
別段気にせず中にはいっていたかろうじてまともな食料をくうことにした。
ドキュッ!ドキュッ!
なゆなゆに血を吸われ朦朧とする意識の中でほんのちっぽけな心残りがあった。
なぜ自分はこんな理不尽な死に方をしなくてはならないのだろうか?と。
そこからいったいどんな話が想像できようか。登場して瞬殺され、出番もなしに
散っていくのはあまりに理不尽すぎる。もし奇跡があるとしたら、これから先に
起こるようなことをさすのだろう。なゆなゆに血を吸われ、生き延びた唯一無二の
生存者。
もはや、彼女の意識はなくなっていたが視界だけはなぜかはっきりとしていた。
考えることもできないのだが今自分の周りで何が起こっているのかだけはきっちりと
記憶されている。いままさに彼女の体が宙をまった。なゆなゆが血を吸い尽くし
ゴミのように誰かに向かって投げつけたのだ。体に衝撃が走る。自分の体を弾き飛ばし
猛然となゆなゆに向かっていくその姿には見覚えがあった。
自分を気絶させ、ここまで運んできた張本人、諸悪の根源、こいつが・・・憎い。
「金曜日はゴミの日!」
ゼロワンはその台詞とともに飛び起きた。壊したはずの録音型目覚ましが復活していたのだ。
なんだか今日は特別嫌な予感がした。
ちょっと前には吸血鬼狩りに付き合わされるわ、あゆあゆに襲われるわでてんてこまい、
それに比べてこの不吉な録音型目覚まし。まさになにかが起こる。そんな日だった。
だがそうもいってられない。俺はなゆなゆをつれ登校することにした。
「今日はついてるぜ・・・傷ひとつなく教室にたどり着けた。」
ゼロワンはやれやれといわんばかりに席についた。
「それじゃあいつもゼロワンが危ない目にあってるみたいだよ。」
隣のなゆなゆがつっこんでくる。
「実にその通りだろ。」
「うー、じゃあゼロワンと一緒にいたら危ない?もし私が襲われたら守ってね。」
あほか、こいつは。貴様が襲ってるんだ、と心の中でだけいい、その台詞の答えは
あいまいにしておく。適当に雑談をし、チャイムが鳴るのをまった・・・
そして非常に珍しく何事もなく学校が終わった。
「まじかよ・・・いつもならこのへんでバトルが一回あってもおかしくないんだが・・・」
俺は今朝の不吉な目覚ましは幸運の裏返しということで良い予兆などと思い始めていた。
が、しかし、やはりなゆなゆが俺に話し掛けてくる。
「ゼロワン、商店街いくよー。」
「・・・・」
俺には二つの選択肢が用意されている。一瞬のすきをついて逃げ出すか、
素直についていくか、逃げれば今日という幸運な日を一気に不幸のどん底に叩き落すことに
なってしまう。素直についていったほうが多少なんとかなるような気がしたので
ついていくことにした。
「なんの用があるんだ?」
「テレビをみようと思って。」
「はっ?」
俺は目が点になる。ウィンドウショッピングだろうか・・・?にしても服だとか
もっとましな選択肢があるはずだが・・・だがあえて逆らうことはせず流れに身を任せる。
電気屋の前でじっとテレビをみつめる。ちなみに何もうつっていない。
「おい、そこのテレビ何もうつってないぞ。みるならこっちのがいいんじゃないか?」
「ゼロワン如きが私に指図するのか・・・?だがおまえは運がいい。今日の私は上機嫌だ。」
俺ははっとなり、あたりを見回す。すでに夕方になっていた。俺もなゆなゆののぞきこんでいる
テレビをいっしょになってみてみる。するとそこに背後に立ち、こちらを見つめている人影が
反射してうつった。
「貴様ッ!そこにいるなッ!」
なゆなゆがどこから取り出したかわからないコップに向かって目から体液を放出する。
そのレーザー状の体液はコップの中でくるりときれいにまがり背後に向かってものすごいスピードで
ほとばしった。シャッ!それを人とは思えないスピードで交わす背後の人。
俺はその姿を目で追うもはやすぎて捕らえられず、声だけが聞こえる。
「あなただけは許さないから・・・!」
ゴリッ!肩にはげしい痛みを感じる。後ろに気配があった。だが、次の瞬間その気配は
消えうせている。ふと気づくととなりにいたなゆなゆの姿も見えなかった。
俺があたりの気配を追っていると上空から異常な殺気を放ちながらラッシュ状態で
降りてくるなゆなゆがいた。そしてそれを迎え撃つ少女。
俺は自分のした行動が今でも信じられない。なぜこんなことをしたんだろう?
なゆと謎の少女のラッシュ比べが始まる直前、俺は甘んじてその中に飛び込んだのだ。
「なーゆ・・・」
「あーう・・・」
ああ、なゆなゆですか?>YES
ああ、あうあうですか?>YES
もしかして両方ですか?>YES
俺の冷静な部分は的確にそう答えた。自問自答しちまったぜ・・・
「なゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆなゆ」
「あうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあうあう」
もちろんゼロワンが珍しく再起不能になったのはいうまでもない。そしてその情景をみて
後になゆはこう語る。
「なんという行動力、そして勇気だ・・・あのラッシュを思うがゆえに身を投じるとは・・・
それに比べ・・・貴様は見込み違いだったようだ。せっかくゼロワンが意図した、しないにかかわらず
チャンスを作ってくれたのに、それを有効にいかすどころかなにもできなかったのだからな。」
なゆなゆは不機嫌そうにその場をさった。
「あ、あうーっ!!」
けなされた少女が去っていくなゆの後ろ姿を見ながらいえた一言がそれであった。
ゼロワンは病院に運ばれ治療を受けていたが難航していた。どう考えても死ぬような
複雑骨折のため骨がくっつかないのだ。まさにミイラ男状態になりながらもゼロワンは
息をしていた。
一方謎の少女は自らをまことと名乗り、それ以外は黙秘。重要参考人として留置所に
おかれることになる。
まことは考えていた。いや、思い出していた。いや、思い出さざるを得なかった。
肩が震える。膝が笑う、奥歯がなる・・・あの吸血鬼の見下した目。
貴様は見込み違いだったようだ。
ぐっ・・・あまりに強く拳を握り締めたため皮膚が破れ血が流れる。
その痛みすらもあの光景を思い出すことを止めることはできない。
「うう・・・」
チャンスを作ってくれたのに、それを有効にいかすどころかなにもできなかったのだからな。
恐怖と憎悪と怒りが入り混じった感情が溢れ出す。
看守がそのわずかな変化に気がついていればもしかしたら、確率は限りなく低いが
この事態を止められたかもしれない。
「あうううううううううう・・・・・」
少しずつ声が大きくなっていく。まことにはやらなくてはいけないことがあるのだ。
そう、妖狐の誇りを捨て去ってでも力を手に入れなくてはならない・・・!
「あうーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
ひときわ高く声を上げるとまことは留置所の壁をけり破った。
ごりゅっ。まこと本人の謎の音が響く。だがあえて気にせずそのまま留置所を脱走した。
数分後、留置所からでた先で足の骨が皮膚から飛び出るほどの骨折したまことが病院に収容されることになる。
「そう・・・力を手に入れた代償は、痛みと肉体・・・・
あともういっこなんか手に入れてた気がするけど・・・忘れた。」
まことは薄れゆく意識の中でそんなことを思っていた。
「でも・・・やっぱりあいつが憎い・・・」
その台詞とともにまことの意識は闇の中へと落ちていった。
「あうーっ!」
奇妙な雄たけびとともに俺を襲った少女が頭突きを放ってくる。(実際放ったわけではないのだろうが)
俺はそれをひょいとかわす。
「あう?」
「ご挨拶だな・・・てめぇ、なんで俺を狙う?」
「あうぅ・・・・」
少女は一向に口を割ろうとしない、こういうときに一番有効なものは・・・
「ウラッ!」
ボゴォ!派手に吹っ飛んでいく少女。だがすぐに飛び起きて俺を指差しこういう。
「あうぅぅぅぅぅ!攻撃したなァァァァァァ!憎んでやるぅぅぅぅ!」
俺はまわりにあった人形(けろぴー)をすぐさま破壊した。なんとなく攻撃してきそうだったからだ。
だが人形はいっこうに動き出す気配はなかった・・・
「このトンチキがぁぁぁぁぁぁ!」
背後の扉が蹴破られる。蹴破った本人はけろぴーの持ち主、なゆなゆだ。
この状況は非常にまずいかもしれない。また2対1だ。もうあんな痛い思いはしたくないぞ。
能力の使い手はどうやらかかとが亜空間に吹っ飛ばされようが、どうみても死ぬような怪我を
負おうが寝てさえいれば時が直してくれるようだ。すばらしい設定だな。
「もー手加減しないからっ!ぶっ殺すから覚悟しなさい!」
「ゼロワンッ!手合わせ願おうかッ!」
絶対絶命、二度目の峠を超えることは、ない。
なら峠に差し掛からなければいい。俺は叫んだ。
「うぐぅ!」
「真似するんじゃネェ!」
壁を突き破ってあゆあゆが突っ込んでくる。そして俺に向かって拳撃を放つ。
「再開を拳で語るとはいったが・・・ここまで実戦しなくてもいいぞ・・・」
「ゼロワンくんがいったんだよっ!僕、ちゃんとこれからも実践するからねっ。」
なめんな。なんか味方が増えたのか敵が増えたのか良くわからない。
さてと、ラスト、呼ぶか。
「あははー、しゃれになんないですねー。」
ドゴォ!オリハルコン合金でできているステッキが壁を破壊する。
半壊した壁を豪快にぶち壊すと気分すっきりといわんばかりに
ステッキをしまう。ひそかにまことをあしげにしているあたりさすがさゆりといったところか。
そして俺に向かって言い放った。
「愚民が・・・瑣末な思いの果てに身を投ずるか。
ゆきすぎた言動に値するものは死ではない。滅としれッ!」
一触即発、いままさにそんな状況がぴったりだ。俺が微動だにできないほどの
破壊力をもっている。逃げようとすれば即死だろう・・・
「やるしか、ないのか・・・」
「ふああー、良く寝た・・・・」
結局その後少女はまことという名前以外まったく謎のまま姿を消した。
俺はまた命を狙われるのか・・・そんな心情を察してかなゆがめずらしく励ましてくる。
「あの狐、逃がしちゃったね。」
なゆはまことをあの狐と呼ぶ、殺すに値しない相手なのか。
「ふん、どこへでもいっちまえ。」
俺はぶっきらぼうに答えた。だが今日のなゆはめずらしく冷静だ。
おまえがあいつを殺してれば・・・トミさんがあいつを殺してくれてれば・・・
そう思うとみんなが嫌だった。でもあいつを逃がしてしまった自分が一番嫌だった・・・
「はぁ・・・ゼロワンはわかってないね。」
「何が?」
「お師さん、ゼロワンに内緒で町中に罠はったりしてくれてるんだよ?
あと、お師さんの知り合いの殺し屋にも探してもらってる。でも見つからないんだって・・・」
意外だった。自分のことしか頭になさそうな人だったが・・・
「でもね、お師さんもね、あの狐の生態がわかるまで捕まえたらここに監禁しておいてくれるって。」
結局自分の研究のためかよ。
「だから、ゼロワン、覚えておいて。あの狐の血を吸いたいのはゼロワンだけじゃないってこと。」
「俺はすわねぇって・・・・」
俺の反論を無視し階段をあがっていくなゆ。俺がバカだった。
みんな自分の利益のために戦っている。俺もそれにならわなくちゃいけない。
今からでも遅くはない、探しにいこう・・・
俺が夕暮れの商店街を歩いているとあっさりみつかった。
ところどころに肉まんが設置されていたのだが、どうみてもあやしい箱が上にぶら下がっているのだ。
大方肉まんを取ると落ちてくるのだろう。町のものは怪しがってだれも近づかない。
すべての罠は起動していない状態だったがいっこだけ発動したものがあった。
外から中をのぞいてみるとまことがそこにねっころがって肉まんをちびちびと食っていた。
「あうぅぅ・・・外においてあった肉まんだから・・・冷たくなってる・・・」
俺に見られているとまったく気がついていなかったようだ。中は意外と広い。
「あの時と同じ・・・なにもおかしな事してないのに暗いところに閉じ込められて・・・」
俺が気絶させて部屋に運んでったときのことかよ・・・独り言が多いな、などと気にしながら
どうやって殺そうか迷っていた。
「今度は暴れない・・・そうすれば、苦しい思いしなくてすむから・・・」
なんか、俺、悪役?内心がっくりきているのだが命には代えられない。
とりあえず奴が眠るのをまってそこを襲うとしよう。なんだか非常に危険な事をいってるきが
するぞ。
「理不尽な事が・・・多すぎるよ・・・・」
そのまま眠りにつくまこと。俺が永眠させてやろう。そうすれば理不尽もなにもないだろうから。
バタン。ドアの音にゼロワンやみんなは飛び起きた。そして玄関にいってみると
そこには殺したはずのまことがたっていた。
「ゼロワンから受けた傷を治療してたら遅くなっちゃった・・・」
まことの体をばらばらにしたまではよかったものの焼却するのを忘れていたのだ。
「ギャグじゃなかったら死んでるわよぅ!」
うかつだった。奴は憎しみを力に変え不可思議な力を呼び起こすのだ。あれぐらいでは
ただただ憎しみがつのるだけ・・・こいつを倒すには、憎しみを消し去るしかない。
「バカやろう・・・俺がどれだけ安心してたか、わかってるのか!」
本音である。そしていまその安心は崩れた。
「あうぅ・・・」
「今日は牢獄が空いてるからそこでとっとと寝ちまえ。」
もがくまことをトミさんがひっひっひ、という笑いとともに連れ去っていく。
その日の夜は静かだった。
まこと・・・俺はその名前に引っかかる。スト3のマイキャラ。
だが単なる偶然ではないのか・・・?なぜ俺に恨みを持つ・・?
俺はまだ、そのときなにも気づいちゃいなかった。この物語に、
謎など存在しないということに。
気がつくと俺は地下の牢獄でまことに尋問していた。
「おまえは何者なんだろうな・・・」
まことがカッと目を見開く。
「私の名をいって見ろォォォォォォ!」
「じゃ、ジャギ様です!」
「まことだろうがぁぁぁぁ!」
目覚めはなかなかよい。昨晩の謎などちっぽけなものにすぎない。
俺はとっとと学校へいくことにした。
ドゴォ!地下で爆音がしたがみな気にせずそれぞれの行動に移る。
「ゼロワンッ!おいてゆくぞッ!」
「勝手にしろ。」
なゆなゆは本当においていってしまった。なんて薄情な奴だ。
でもそれを止めないトミさんももっと嫌で、なゆに追いつけない自分が一番嫌だった。
誰かのせいにしないとやってけないぜ・・・この状況は。
「ゼロワン、一緒に逝こう。」
「遠慮する。」
まことが牢屋から抜け出して死闘を求めている。もちろんそんなにかまってる暇はない。
「だいたい、おまえ俺を殺す以外にもやることあるだろうが。
食いたいものくって殺したいやつころして、それじゃ殺人鬼と同じだぞ。」
「あうぅー・・・」
久々だな、正論いうの。
「理解できたならトミさんの手伝いでもしてろ。」
「まこと、わしと一緒に遊びましょうか。ひっひっひ。」
「怖いのやぁ!」
もがくまことを無理やり引きずり込むトミさん。
ぐっばい。まこと。
「あの狐、どうしてた?」
「トミさんに遊んでもらってる。」
「まさか・・・お師さん、私に内緒であの狐、くう気じゃ・・・!!」
それはないだろう。実験台にはなるかもしれんが。
「もしそうだとしたらサイッコウに許せんよなぁぁぁぁ!」
こめかみに指を突っ込んでをぐりぐりするなゆなゆ。おまえ頭弱点じゃなかったのかよ。
そして授業がおわりだす・・・
俺が帰ろうとふと玄関をみてみるとそこに明らかに不審人物が待ち構えていた。
いちおう隠れているつもりらしいが上からみればばればれである。
こちらから不意打ちをかけてやろうと、窓から飛び降りようとした時、
一人の女生徒に話し掛けられた。
「あなたは、あの狐の知り合いですか?」
「おい、あの狐っていうな。あの子ORあの娘といえ。」
俺は窓から飛び降りるのを中止し、その生徒に向き合う。
「そんなことどうでもいいでしょう?これだから野蛮人は・・・」
言葉にめちゃくちゃとげがあるぞ。
「で、何のようだ?」
「いえ、別に。」
「用がないならいくぜ。」
「ただ・・・」
ただ・・・なんだよ。俺はこういうタイプをみているといらいらする。
ついでに自分と話しているとさらにむかむかしてくる。
「なんだ・・・?」
「聞きたいですか?」
「聞きたくない。」
ぴくぴく。俺はぶちぎれて撲殺してしまいそうになる心境を押さえながら
冷静に話を聞こうとする。
「公開しますよ。」
この女、俺の何を公開するといっているのだ・・・たんにかまかけてるだけだろうか。
「すいません、後悔の間違いでした。」
「とっとといえよ。聞いてやるから。」
「あなたは今、奇跡の渦中にいます。そこではどんな不可思議なこともおこりえるでしょう。
ですがそれは夢の続き、いつかはさめる、そしてさめたとき、あの狐は・・・・」
俺はそこでとっさにブローをかまして気絶させた。こいつは知っている。
まことが妖狐であることを。そしてそのパワーアップの秘密を。
こいつをまことに合わせてはいけない。俺はそこからすばやく飛び降り
まことに上空から攻撃をしかけた。
「ウラァッ!」
「あうぅーっ!」
蹴りと拳撃がかちあう。
ガシィッ!ゴキィッ!俺の手の甲から血が噴出す。
以前さゆりの攻撃を防いだときの傷がまだ完治してなかったか・・・!
さらに今まで黙っていたがこの前のラッシュ比べの渦中に身を投じたときの傷の
せいで思うように力がでない。
「まこと、今日はパスだ。なんか商店街でおごってやるから。」
「肉まん、かってくれる?」
「ああ。」
「クラッカーヴォレイ、買ってくれる?」
「ああ。」
安請け合いしていいんだろうか・・?てかクラッカーヴォレイってうってたっけ・・・
俺はさほど気にもとめず商店街へと向かった。
100円ショップ・・・
ここには世界中から100円で買えるものが集まる。結構レアなものまで
あっていらない人にはゴミでしかないが必要にしてる人にとっては喉から手がでるほど
ほしいものもある。たとえば、これとか。
「ゼロワン、これほしい。」
そういって差し出してきたのは「鈴(クラッカーヴォレイ)」だった。
「バカ、こい。もっといい武器かってやる!」
「あうぅーっ!これがいいのっ!」
その場でだだっこのようにすねるまこと。このマンモーニがっ!
俺は仕方なしに100円を渡してそれを買ってこさせる。
「えへへー・・・えいっ!」
ためしに鈴を俺に向かって振り回してくる。それを俺はひょいとかわす。
あたるものと思っていたらしく油断しているまことに綺麗に円を描いてクリーンヒットする。
メリッ!
なにかものすごい音がしたが・・・
「イタァァァーイっ!なんで私にあたんなくちゃいけないのよぉぅ!
もう容赦しないんだから、ぶっ殺してあげるから覚悟しなさいよぉ!」
悪役の捨て台詞のように吐き捨てながら家の方角へと走っていくまこと。
あの鈴、もしかして危険・・・?
家に帰ると電話がなった。俺がでると、
「ま・こ・と・は・あ・ず・か・っ・た・か・え・し・て・ほ・し・く・ば・」
プチ、ツーツー。
電話の主は俺が廊下であったブローを入れた女生徒のものだった。
くだらん電話をかけてくるな。俺はその晩を怠惰にすごした。
深夜。
カチャリ・・・
俺は扉が開く音に目を覚ます。夜這いか?強姦か?いや、こんなギャグ小説に
そんなネタはあるはずないな。俺の中の期待は急速にしぼんでいく。
そしてその扉をあけた本人はチリン、とその鈴を鳴らした。
いったいなにがしたいのだ・・?俺を暗殺するつもりならそんな音のなるような
ものをもたないはずだ。俺が寝たふりをしながら様子をうかがっていると、
「戦いたい・・・・ゼロワンと戦いたい・・・・」
そう言い残し部屋にもどっていった。
そういえばあの電話のあとしばらくして帰ってきたがなにか様子がおかしかった。
一体やつになにがおこったのだろうか・・・?もしや妖狐の封印をあの女生徒に
といてもらってきたのか・・・!?だとしたら俺に勝ち目はない・・・
だが力と裏腹にその日以来、まことは突然襲いかからなくなってしまった。
俺が不気味がって避けていると向こうもそれをのぞんでいるようだった。
そしていつものように学校で呆けているとずかずかと上級生のクラスにはいってくる
一人の女生徒がいた。というかこっちに向かってくる。
「こんにちわ、ゼロワンさん。」
俺は目を合わせないようにした。あたりの男子や女子どもがひそひそ声で
あいつ、転校してきてもう下級生にこなかけてるぜ。
てぇはやすぎよ・・・・。
などとささやいている。俺はいたたまれなくなりその場から駆け出した。
クラスは笑い声に包まれていた。
その当時の俺は自分の周りにいるものすべてが俺に恨みをもって
襲いかかってくるのではないか、と恐怖していた。このままではいつかまことに殺される・・・
どこに隠れているかわからない・・・そんな恐怖におびえる姿は誰かに似ていたが・・・どうでもいい。
無事家に帰るとまことの姿はなかった。
居間にいくとトミさんとなゆが座っている。まるで俺をまっていたかのように。
「ゼロワンさん、少しお時間いいですか?」
「え、ええ。かまいませんが・・・」
「実はまことを逃がしました。」
なんだって・・・?そんなことをしたら俺の悩みの種がまた増えるじゃないか。
やつを殺せばこの恐怖から開放されるのに・・・!
「私もあの狐の血、ほとんど吸い尽くしちゃってたから
少し泳がせて力蓄えてもらったほうがうれしいよ。」
養殖かよ。だが俺に決定権はない、というかすでに手遅れだ。
俺がまことを殺しにいくというとそれだけはだめだ、とトミさんに止められた。
実験材料がいなくなるからか・・・なゆもまた人間の血に飽きたときやつを
吸いたいのだろう。いまは飽きているようだが・・・・
俺は負けん気ばりにトミさんとなゆにこういった。
「あいつが貧弱ゥなまま帰ってきたら、牢獄を肉まんで埋め尽くしてやりましょうよ。
そうすればそこでぬくぬく育って今度こそ完全なるとどめをさせるはずだから・・・」
だけど、俺の本心は・・・
ずっと、帰ってこなければいいのに・・・
カノンリベンジ -4-END