カノンリベンジ 
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エピローグ・さゆりん
俺が夜の学校にかようようになってから1週間以上の月日がたった。
かようといってもよなよな毒電波に引き寄せられたり怪しい活動をしているわけではない、と思う。
ここに出没する魔物(心当たりがある・・・)を倒すためにふとしたきっかけで友情をかわした舞と
こうやって夜、潜入してるわけだ。
「ゼロワン、頼みがある。」
口すくない舞が自らはなしかけてくるなんて珍しい。
「さゆりを元に戻してほしい。」
以前なゆなゆのオプティックブラストによって貫かれたその日からさゆりは以前とはまったく別人の
ように豹変してしまったのだ。俺もなんど命を狙われたかわかったもんじゃない・・・
「だがなぁ、あれは直せといわれてなおるもんじゃないぜ?」
「お願い。」
「まぁやるだけやってみるか・・・・」
と、その時だ。背後のカーテンが突然俺に向かって突っ込んできた。
「伏せて。」
言われた通り俺は前方に転がるように伏せる。
ザシュ。
カーテンに剣がつきささる。魔物ってこんなんだったっけ?
バタンッ。
どこかでみたような顔がその場に倒れる。こいつは・・・・俺の命を付けねらうアサシン・・・
「あうーっ・・・」
「なにやってんだよまこと・・・・」
「カーテンで視界を奪ってからハイメガキャノンでフッ飛ばそうと思って・・・」
腹に剣が突き刺さりながらも自らの作戦をしぶしぶ話す。
ズビュリ。剣を無造作にぬく舞。もちろんまことは・・・
「いたぁぁぁぁぁいッ!なんでこんな痛い思いしなくちゃなんないのよぅ!」
「おいで。」
舞がまたも珍しく初めてあったであろうまことに声をかける。
「?」
「頭なでてあげる。」
「こいつ、アブナイわよ。」
「同じ穴のムジナだろうが。それよりそのカーテン、ちゃんと隠滅しとけよ。お前の血
 吸ってるからDNA鑑定されたら厄介だ。忍びってのはそういうのから色々わかっちまうんだろ?」
「あうーっ・・・わかった・・・」
しぶしぶハイメガキャノンでカーテンをカスにする。上から降ってくるけどほんとはワープしてきてたのか・・・
「じゃあな。」
家に帰った俺はさっそくベッドにころがり考えをめぐらせていた。
かといって舞に頼まれたさゆりをもとにもどす方法なんざ思いつくはずもない。
俺はとりあえず睡眠をとることにした。

「朝~、朝だよ~」
俺がその目覚ましをきいたのはすでにすべての準備を整え終わったあとだった。
俺はなゆなゆをおいて素早く家をでた。そして舞とさゆりの現れる場所に潜伏する。
ほどなくしてさゆりと舞がそろって現れる。俺はさりげなくとおりかかるふりをして声を
かける。
「よう、おふたりさん。」
「おはようございます、ゼロワンさん。」
ササササ・・・・・
舞は超スピードでかなたまですっ飛んでいった。
「あははー、ゼロワンさん、嫌われてますねー。」
「舞め・・・俺ひとりにやらせる気かよ・・・」
「なにぃ?きこえんなぁ?殺らせる?このさゆりを?」
顔色が変わった。明らかに敵意をもっている。だがまだ交渉は可能だ。
「あ、いや違うんだ。と、ところでさゆりさんはいつになったら元に戻ってくれるんだ?」
我ながらばかな会話だと思った。そんなことにこたえてくれるわけがない。
だが返答は意外にもあっさりときた。
「さゆりの怒りが収まれば、いつでも元のさゆりに戻りますよ。」
「怒り・・・?」
俺は思わず聞き返してしまった。もう引き返せない。
「昔、さゆりには弟がいました。名を一八。」
俺はだまって話しにききいる。さゆりはそのまま懐かしむような悲しむような複雑な表情をしながら続ける。
「一八は生まれつき体が強く、その力は現当主平八すら上回るものでした。」

「次に生まれてくる子は運命の子だ。」
「はい、おとうさま。」
「天使か悪魔かわからないが我が一族にふさわしいかどうか見定めてやろうな。」
「はい、おとうさま。」
そして生まれた一八。ピンチに陥ると空を飛び地上にむけてレーザーを放ったりと
そのやんちゃぶりにはさゆりも手を焼きました。そんなある日、一八が突然
入院しました。おとうさまは重い病気にかかっている、といっていましたがお見舞いに
いってみると病気というより栄養失調にしかみえません。
「一八・・・元気になったらまた大空を飛ぼうね。」
コクコク・・・
「一八・・・元気になったらまた新しい技覚えようね。」
コクコク・・・
そんなお見舞いが続いたある日、一八はヘリコプターに乗せらどこかへいきました。
ついた先はどこかわからないけどおおきなお山です。真中には熱そうな火がたぎっています。
おとうさまはヘリをそこの付近におろすといいました。
「私の財産をこの年から狙うとはな・・・」
というと一八を噴火口の中に投げこみました。さゆりは初めて人が憎いと、思いました。


「で、その話しと今の怒りはなんのつながりが・・・?」
「まったくありません。」
見事にやられた。俺は適当にもてあそばれていただけなのだ。
「とも、いえませんがただ、一八ももちろん、そのおとうさまももういませんけどね。」
「そうなのか・・・」
やっぱり聞かないほうがよかった気がする。
「この怒りを誰にぶつければいいのか、そして怒りが
 収まったとき普通に戻れると思います。時間はかかるでしょうけど。」
怒り、か。おそろしいまでの負の心に満たされている。こいつは手ごわい。
なんとなくまことの恨みとにているな・・・あいつすら改心させられない俺に
できるだろうか・・・?怒りを超える感情でさゆりを満たすことなど。原因はやっぱり
あいつにあるんだろうな・・・なゆなゆ・・・
あのときの校舎の事件・・・・

それが元凶なら俺にも責任がないとはいえない。
俺は意をけっして放課後、待ち伏せをした。
向こうからさゆりと舞が歩あていくる。舞は俺の姿を黙認するや否や突然走り出し
逃げてしまった。
「あ、ゼロワンさんだーっ。」
「あ、ああ。ゼロワンさんだぞ。」
正直怖い。いつあの激痛に見舞われるかわかったものではない。だがこの先のことを
考えるとここで憂いを払っておけば安泰である。
「今日、これから決闘しないか?」
「さゆりはちょっと弱い普通の女の子ですよ?ゼロワンさん、幻滅しますよ。」
謙遜じゃあないことはわかっている。こいつは俺を嘲笑している。
「いや、そんなことないぜ。俺からみても最強クラスだ。」
「ゼロワンさんはそんなにさゆりと決闘したいのですか?」
ぐ・・・・正直したくない。だがこれで怒りとやらがおさまれば・・・そう思うと
俺はうなづき、二人でストリートファイトをするため商店街へと向かった。

俺ごときが相手になるレベルではなかった。最初こそラッシュでおしていたものの
「あ、コツつかみました。」
といって、ステッキによる恐怖のラッシュ破りをされる。
その後も通りすがりの格闘家達がたばになってかかっても瞬殺。その顔を覗き見ると
悪魔のような笑みでくくく、と笑っているのだ。そのダークサイドな面にひかれてか
いつしかさゆりん八傑集なる歩兵部隊までもが出来上がっていた。
「くくく・・・我がオロチの血の前にひれふすがいいッ!」
俺は心底後悔した。こんなことまでさせなくては無理ということがわからなかったのか。
舞にいってやろう。さゆりはこんなにも壊れてしまっている、と。
「いつかさゆりはゼロワンさんを、はい、死んでください、って瞬殺できるようになります。」
ならなくていい。今は、耐える時期だ・・・俺は薄れゆく意識の中それだけを思っていた。

エピローグ・さゆりん・END